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東京地方裁判所 昭和56年(ワ)13047号 判決

原告兼亡大関剛訴訟承継人

大 関   壽

原告右同

大 関 キ ミ

右両名訴訟代理人弁護士

椎 名 麻紗枝

小 山 久 子

被告

右代表者法務大臣

高 辻 正 己

右訴訟代理人弁護士

土 谷   明

右指定代理人

菊 地 敬 明

外三名

主文

一  被告は、原告大関壽に対し、金一三三五万八〇七六円並びに内金一二一四万三〇七六円に対する昭和五二年七月二六日から、及び内金一二一万五〇〇〇円に対する昭和六三年九月八日から、各支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告は、原告大関キミに対し、金一三〇四万三一四六円並びに内金一一八五万八一四六円に対する昭和五二年七月二六日から、及び内金一一八万五〇〇〇円に対する昭和六三年九月八日から、各支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告らのその余の請求を棄却する。

四  訴訟費用は、これを四分し、その一を被告の、その余を原告らの各負担とする。

五  この判決は、主文第一、二項について、各金五〇〇万円の限度において、仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告大関壽に対し、五二〇九万九二五五円並びに内金四七三六万二九六〇円に対する昭和五二年七月二六日から、及び内金四七三万六二九五円に対する昭和六三年九月八日から、各支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  被告は、原告大関キミに対し、五一五九万三三三二円並びに内金四六九〇万三〇三〇円に対する昭和五二年七月二六日から、及び内金四六九万〇三〇二円に対する昭和六三年九月八日から、各支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は、被告の負担とする。

4  仮執行の宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告らの請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は、原告らの負担とする。

3  担保を条件とする仮執行免脱の宣言

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  当事者

(一) 原告大関壽(以下「原告壽」という。)は、昭和五〇年八月一五日に出生した大関剛(以下「剛」という。)の父であり、原告大関キミ(以下「原告キミ」という。)は剛の母である。

(二) 被告は、東京都世田谷区太子堂三丁目に国立小児病院(以下「本件病院」という。)を開設し、これを運営している。

2  剛の本件病院入院に至る経緯

剛は、出生時下部食道気管瘻を有するグロスC型の先天性食道閉鎖症を伴っていたため、出生後、旭川市立旭川病院において、胃瘻造設及び下部食道気管瘻切離の手術を受け、右胃瘻部から継管によって栄養補給を受けるとともに咽頭分泌物により肺合併症を起こさないように口側食道盲端部において分泌物の吸引を受けていたが、原告らは、剛に本件病院において胸腔内で上下食道盲端間に有茎空腸を移植し、各端々を吻合する方法による食道再建手術(以下「本件食道再建手術」という。)を受けさせるため、昭和五一年一一月一日、被告との間で、右手術及びその術後管理等を目的とする契約(以下「本件契約」という。)を締結し、剛は、同日、本件病院に入院した。

3  本件食道再建手術の施行とその後の呼吸管理

剛は、昭和五一年一一年二二日、本件病院において、本件食道再建手術を受け、その後、鼻腔から気管内に外径四ミリメートルのポルテックス製チューブを挿入して人工呼吸を受けていたが、昭和五二年一月二六日、気管切開手術を受け、以後、右切開部に挿入されたシリコン製Tチューブにより自力呼吸をするようになり、また、同年二月二五日以降、徐々に食物の経口摂取をするようになった。

しかし、右Tチューブによっては気管内分泌物を十分吸引することができず、しばしば肺炎を併発したため、剛は、同年四月二八日以降、右Tチューブに代えて、気管内分泌物を吸引しやすいポルテックス製気管カニューレを挿入され、同年七月二五日当時は、右気管カニューレにより呼吸をしていた。

4  気管カニューレ抜去事故と剛の死亡

(一) 剛は、昭和五二年七月二五日午前一一時ころ、それまでいた本件病院三階東病棟(以下「本件病棟」という。)の三一九号室(病床数六床)から、個室である同三二二号室(以下「本件病室」という。)に移され、同日午後一時三〇分ころから、本件病室において、胃瘻部からミキサー食の注入を受けていたが、同日午後二時すぎころから同二時三〇分ないし四五分ころまでの間に、気管切開部に挿入されていた気管カニューレが抜けてしまい(以下、この気管カニューレ抜去事故を「本件事故」という。)、呼吸することができなくなって重篤な脳酸素欠乏症に陥り、高度中枢神経障害を起こして、いわゆる植物人間の状態となり、意識も知覚も回復しないまま、昭和五七年六月一二日慢性的(遷延性)窒息により死亡した。

(二) 剛のように、重篤な脳酸素欠乏症により高度中枢神経障害を起こしていわゆる植物人間の状態となった患者は、人工的に辛うじて生命を維持されているだけであって、早晩死を免れないのであり、剛は、長期にわたり低酸素状態が持続して、慢性的(遷延性)窒息により死亡したのであるから、本件事故と剛の死亡との間には明白な因果関係がある。

5  被告の責任

(一) 被告の被用者であり、かつ、本件契約の履行補助者である本件病院の医師及び看護婦らには、本件事故による剛の死亡につき、次のような過失がある。

(1) 気管カニューレ装着上の過失

本件病院の医師らは、剛に対し、剛がせき、痰、嘔吐などをしたり、あがいたりしても気管カニューレが気管切開部から抜けないように気管カニューレをしっかり装着すべき注意義務を負うのに、これを怠り、剛に対して気管カニューレを適切に装着しなかったため、剛が前記のとおり胃瘻部から注入を受けていたミキサー食を嘔吐した際、右ミキサー食が気管内に逆流して気管カニューレを気管切開部から押し出したか、又はミキサー食が気管内を逆流してきたため剛が苦しがって自らの手で気管カニューレを抜いたことにより、本件事故が発生したのである。

(2) 本件病院の施設管理上の過失

仮に本件事故が他人が故意に気管カニューレを抜去したために発生したものであるとしても、右は本件病院の排他的な支配・管理下にある本件病室内においてされたものであるから、被告は、本件病院の施設管理上の過失を免れない。

(3) 剛に対する看護上の過失

剛は、昭和五二年七月二五日当時、その呼吸を気管カニューレによって行っており、これが気管切開部から抜けた場合には、数分以内に気管カニューレの再装着その他の呼吸維持の処置が採られなければ、窒息により脳などに障害が生ずる状態であった。そして、このことと、抜去の危険性の全く存在しない安全な気管カニューレの固定方法はいまだ存しないこと、一般に、気管カニューレを気管内に挿入すると、気管及び気管支の繊毛上皮の機能が低下し、気管内分泌物を喉頭に向かってうまく運び出せなくなり、気管内吸引を行わずに放置すると、気管内分泌物が気管支ばかりでなく気管カニューレをも完全に閉塞し、死亡という重大な結果にっながるおそれがある上、剛は、特に痰等の気管内分泌物が多く、しばしば肺炎を繰り返していたので、これを防ぐためにも適宜気管内分泌物を吸引除去することが必要とされていたこと、また、剛は、ミキサー食注入後これを嘔吐したことがしばしばあり、吐物が誤って気管内に入って窒息したりして致命的結果につながる危険があったこと、しかも、剛は、当時満一歳一一月の幼児で、気管カニューレが抜去する事態が発生したとしても、自らこれに適切に対処し得る判断能力を欠いており、かつ、気管カニューレを気管内に挿入しているため、声を発することもできず、苦しくて泣いても声にならない状態にあったこと、気管カニューレ挿入中は気道上部の乾燥を防ぐため適当な湿度の維持が必要とされていたこと等を考慮すると、本件病院の看護婦らは、剛を二四時間看視下に置き、常時剛の動静を綿密に観察して気管カニューレが気管切開部から抜けるなどしたときには、早期にこれを発見して適切な処置をすべき看護上の注意義務を負っていたものというべきである。しかるに、本件病院の看護婦らは、これを怠り、本件病室はナースステーションからは内部を見通すことができない位置にあったにもかかわらず、本件病室の廊下側の窓にシーツをカーテン代わりに掛けて廊下から室内を観察することもできない状態とした上、前記のとおり、同日午後一時三〇分ころ剛の胃瘻部からミキサー食を注入し始めた後は、原告キミが同日午後二時過ぎころ食事等のために本件病室を出た後帰室して前記気管カニューレ抜去の事実を発見し、本件病院の今野みき子看護婦(以下「今野看護婦」という。)に右事実を伝えるまでの間、他の入院患者の看護等に追われて、剛の動静について観察をしなかったため、本件事故を早期に発見することができず、前記のとおり、剛を植物人間の状態に陥らせた上、死に至らせたのである。

(二) よって、被告は、債務不履行又は民法七一五条により、本件事故によって原告ら及び剛が被った後記の損害を賠償すべき責任がある。

6  損害

(一) 剛の逸失利益

三三八〇万六〇五九円

剛は、本件事故により死亡することがなければ、高等学校卒業後一八歳から五〇年間稼働し、その間、我が国の社会通念により是認されている年功序列式賃金により収入を得ることが可能であったところ、昭和五五年賃金センサス第一巻第一表によれば、産業計・企業規模計の高等学校卒業男子労働者の年齢別平均年間給与額は別紙「逸失利益計算表」の「年間給与総額」欄記載のとおりであるから、これを基礎として、右各金額からホフマン式計算法によりそれぞれ年五分の割合による中間利息を控除して計算すると、右計算表記載のとおり、剛は、右稼働可能期間中に合計五六三四万三四三二円の収入を得ることができたはずであるところ、剛は右就業年齢に達する前に死亡したため、右稼働可能期間中の生活費として右合計金額から四割を控除した三三八〇万六〇五九円をもって、剛が本件事故により死亡したことによって得ることができなくなった利益というべきである。

(二) 原告壽の支出した雑費

八万四九三〇円

剛は本件事故により、いわゆる植物人間の状態となってしまい、排便、排尿等のための紙おむつを要することになったため、原告壽は、昭和五二年七月二五日から剛が死亡した昭和五七年六月一二日までの間に、紙おむつ代として合計八万四九三〇円を支出した。

(三) 原告壽の支出した葬儀費用

三七万五〇〇〇円

原告壽は、剛の葬儀費用として合計三七万五〇〇〇円を支出した。

(四) 慰謝料

(1) 剛について 三〇〇〇万円

剛は、先天性食道閉鎖症の根治手術である本件食道再建手術が成功し、将来の外出、外泊に備えて、母親である原告キミが剛に付き添って食物の経口摂取の訓練を開始するまでに回復していたにもかかわらず、本件病院の医師らの過失による本件事故により、回復不能のいわゆる植物人間の状態に陥った上、約五年間の闘病生活の後に死亡するに至ったもので、これにより剛が被った精神的苦痛を慰謝するには、三〇〇〇万円を下ることのない金員が支払われる必要がある。

(2) 原告らについて 各一五〇〇万円

原告らは、本件病院を信頼して、最愛の子である剛を入院させたところ、本件病院の医師らの過失による本件事故により、剛をいわゆる植物人間の状態にさせられた上、遂には剛の生命まで奪われたもので、これにより原告らが被った精神的苦痛を慰謝するには、原告らに対して各一五〇〇万円を下ることのない金員が支払われる必要がある。

(五) 弁護士費用

剛及び原告らは、本件原告ら訴訟代理人に対し、本件訴訟の提起及び逐行を委任し、その手数料及び報酬として、それぞれ請求額の一割を支払うことを約し、この結果、剛は六三八万〇六〇五円の、原告壽は一五四万五九九三円の、原告キミは一五〇万円の各支払義務を本件原告ら訴訟代理人に対し負担した。

7  相続

原告らは、剛が昭和五七年六月一二日死亡したのに伴い、相続により同人の権利義務を各二分の一の割合で承継した。

8  結論

よって、原告らは、被告に対し、債務不履行による損害賠償請求権又は民法七一五条による損害賠償請求権に基づき、原告壽においては、その固有の前記損害合計一七〇〇万五九二三円と相続により取得した剛の前記損害合計七〇一八万六六六四円の損害賠償請求権の二分の一の三五〇九万三三三二円との合計五二〇九万九二五五円並びにその内金である剛及び原告壽が被った弁護士費用相当額の損害を除いた損害合計四七三六万二九六〇円に対する本件事故の日の後である昭和五二年七月二六日から、及び右弁護士費用相当額の損害合計四七三万六二九五円に対する本件口頭弁論終結の日の翌日である昭和六三年九月八日から各支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の、原告キミにおいては、その固有の前記損害合計一六五〇万円と相続により取得した剛の前記損害合計七〇一八万六六六四円の損害賠償請求権の二分の一の三五〇九万三三三二円との合計五一五九万三三三二円並びにその内金である剛及び原告キミが被った弁護士費用相当額の損害を除いた損害合計四六九〇万三〇三〇円に対する本件事故の日の後である昭和五二年七月二六日から、及び右弁護士費用相当額の損害合計四六九万〇三〇二円に対する本件口頭弁論終結の日の翌日である昭和六三年九月八日から各支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実は、認める。

2  同2の事実は、認める。

3  同3の事実は、認める。

4  同4(一)の事実のうち、剛が原告ら主張のとおり本件病室に移されたこと、本件事故が発生したこと、剛が脳酸素欠乏症に陥り、高度中枢神経障害を起こしていわゆる植物人間の状態となり、昭和五七年六月一二日死亡したことは認め、その余は否認し、同(二)の主張は争う。

剛の死亡後実施された解剖所見によると、剛の死因は慢性的(遷延性)窒息とされているが、剛は、本件食道再建手術後、呼吸障害に対する呼吸管理上の必要から最終的に気管切開を受けたのであり、気管切開前から健常な呼吸状態ではなく、気管切開後本件事故までの間にも気管の肉芽や分泌物等によって呼吸が悪化したことが度々あった。したがって、本件事故がなければ、遷延性窒息が起こらなかったというものではないのであり、本件事故と剛の死亡との間に因果関係があるということはできない。

5  同5について

(一) 同5(一)冒頭の主張は、争う。

(二) 同5(一)(1)の事実は、否認する。

本件病院の高橋基夫医師(以下「高橋医師」という。)は、昭和五二年七月一九日、剛に対して気管カニューレを交換して装着したが、その際、同医師は、気管カニューレを気管内に約四.五センチメートル挿入した上、これに通してあるひもを指一本が入る程度の余裕を残して剛の首の後方又は側方で固結び(男結び)の方法で緊縛し、その後剛の首の前方の気管カニューレの入っているところに二つないし三つ折りの割りガーゼを入れる方法で気管カニューレを固定したのであるから、当時二歳に満たない幼児の剛が自らの手でこれを抜去し得る状態ではなく第三者があえて右気管カニューレを抜去しない限り、右気管カニューレが自然に気管切開部から抜去することはあり得ないのであって、同医師に気管カニューレ装着上の過失があったということはできない。

なお、剛は、同月一〇日、気管切開部の上方の気管内に発生した肉芽の除去手術を受けたが、この際、肉芽の再成を防ぐため、気管切開部の上方の気道部分にシリコンメッシュを棒状に巻いたものを挿入して固定する処置も受けており、剛が食物を嘔吐しても、嘔吐物が誤って気管内に逆流する事態は生じ得ない状態であった。

(三) 同5(一)(2)の主張は、争う。

(四) 同5(二)(3)の事実のうち、剛が原告ら主張の当時気管カニューレにより呼吸をしており、これが抜けた場合には、早期に気管カニューレの再装着等の呼吸維持の処置が採られなければ、脳等に障害が生ずる状態であったこと、剛は痰等の気管内分泌物が多く、しばしば肺炎を繰り返しており、これを防ぐため適宜気管内分泌物を吸引除去することが必要とされていたこと、剛が当時満一歳一一月の幼児であったこと、剛が発声不能の状況にあったこと、本件病室はナースステーションからは内部を見通しにくい位置にあったこと、今野看護婦が原告キミから本件事故の報告を受けたこと、その後剛が原告ら主張のとおりの状態に陥ったことは認め、その余は否認し、その主張は争う。

本件事故が発生した昭和五二年七月二五日当時、本件病棟には剛を含む約二五名の入院患者がおり、六名の看護婦でその看護に当たり、各入院患者の病状に応じて適宜巡回して観察する方法により看護を実施していたのであり、また、剛は、当時、食物の経口摂取も徐々に実施しており、常時看護を必要とする重症の状態ではなく、しかも、母親である原告キミが同日から本件病室で剛に付き添うことになり、剛に異常が生じた場合には原告キミから本件病院の看護婦に対して報告を受けることも期待できたのであるから、剛を二四時間看視下に置かなかったからといって、本件病院の看護婦らの看護に過失があったということはできない。

(五) 同5(二)の主張は、争う。

6  同6について

(一) 同6(一)ないし(三)及び(五)の各事実は、知らない。

(二) 同6(四)の事実のうち、剛が本件病院に入院して本件食道再建手術を受けたこと、その後剛がいわゆる植物人間の状態に陥った上、約五年後に死亡したことは認めるが、その余は否認し、その主張は争う。

7  同7の事実は、認める。

三  抗弁

1  剛の法定代理人でもある原告らは、昭和五二年七月二五日、本件事故の発生を知り、以後三年を経過したので、不法行為による損害賠償債務は時効により消滅した。

2  被告は、本訴において、右時効を援用する。

四  抗弁に対する認否

抗弁1のうち、剛の法定代理人でもある原告らが被告主張の日に本件事故の発生を知ったことは認めるが、その主張は争う。

原告らが、本件事故が本件病院の医師らの過失により発生したものであることを知ったのは、原告らが本件訴訟を提起した昭和五六年一一月六日の直前ころである。

第三  証拠〈省略〉

理由

一請求原因1(当事者)の事実は、当事者間に争いがない。

二本件事故発生に至る経緯

請求原因2(剛の本件病院入院に至る経緯)及び同3(本件食道再建手術の施行とその後の呼吸管理)の各事実は、当事者間に争いがなく、右当事者間に争いのない事実と、〈証拠〉を総合すれば、次の各事実を認めることができる。

1  剛は、出生時、下側の食道と気管支とがつながっている下部食道気管瘻を有するグロスC型の先天性食道閉鎖症を伴っていたため、昭和五〇年八月一八日と一九日の両日にわたって、旭川市立旭川病院において、右食道閉鎖症に対する治療の第一段階として、胃瘻造設及び下部食道気管瘻切離の手術を受け、右胃瘻部から継管により栄養補給を受けるとともに、咽頭分泌物が気管に流入して肺合併症を起こさないように口側食道盲端部において分泌物の吸引を受けていたが、剛は、痰が多く、肺合併症(肺炎)を度々起こしていた。

2  剛は、前記食道閉鎖症に対する根治手術を必要としたが、剛の場合、上下の食道盲端部の距離が長く、食道と食道とを単純に吻合することは不可能だったため、本件病院において、胸腔内で有茎空腸を上下食道盲端間に移植して各端々を吻合する方法による食道再建手術(本件食道再建手術)を受けることになり、昭和五一年一一月一日、本件病院に転院し、同月二二日、秋山洋医師らの執刀により本件食道再建手術を受けた。

3  剛は、本件食道再建手術後、鼻腔から気管内に外径四ミリメートルのポルテックス製チューブを挿入して陽圧人工呼吸を受けるようになったが、気道内の滲出液の貯溜や胸腔内の移植腸管の穿孔に伴う炎症等により肺炎の危険が続いたため、その後継続して右人工呼吸を受けていた。そして、昭和五二年一月一七日、自力呼吸をするため右チューブの抜管が試みられたが、気管入口部の声帯部に肉芽様の組織が盛り上がっているところがあり、気道が狭窄していて自力呼吸が十分にできなかったため、右チューブを抜管することができなかった。そこで、同月二六日、剛に対して気管切開手術が施行され、右切開部に肉芽増殖及び上気道狭窄の防止に効果のあるシリコン製Tチューブが挿入され、剛は、以後右Tチューブにより自力呼吸をするようになった。

4  しかし、その後も、右Tチューブによっては気管内分泌物を十分に吸引することができず、剛は、しばしば肺炎を併発したため、昭和五二年四月二八日以降、Tチューブに代えて、気管内分泌物の吸引がしやすいポルテックス製気管カニューレが挿入された。また、同年七月一二日には、気管切開部より上方の声門直下にできた肉芽を除去する手術を受けたが、この時、肉芽の再生を防止するため、シリコンメッシュを巻いて棒状にしたものが気管切開部上方の声門直下に挿入された。

5  剛は、本件食道再建手術後みられた移植腸管の穿孔もその後治癒して、胃瘻部からの継管注入による栄養補給から徐々に経口摂取もできるようになり、また、気管内分泌物が十分に吸引できなかったことなどによる肺合併症も気管カニューレを挿入するようになってから次第に改善され、昭和五二年七月二五日当時、今後肉芽の形成による気道狭窄に対する治療が相当期間必要とされてはいたものの、身体的には全体として良好な状態に向かっていた。そして、将来の退院、家庭内看護に備えて母親である原告キミに経口摂取の練習をさせることなどを目的として、同日から原告キミが二四時間剛に付き添うことになった。

6  ところで、本件病院においては、剛の気管カニューレの交換は、少なくとも一週間に一回の割合で医師が適宜行っていたが、後記のとおり昭和五二年七月二五日発生した本件事故前最後の気管カニューレの交換は、同月一九日に高橋医師により行われた。なお、同医師は、当時、気管カニューレの固定方法として、気管カニューレを気管内に挿入した上、その上部に通してあるひもを剛の首の回りに回し、指一本が入る程度の余裕を残して首の後方又は側方で固結び(男結び)の方法で緊縛し、余分なひもを結び目の末端で切り、その後気管カニューレの入っているところに二つないし三つ折りしたガーゼを入れる方法をとっていた。

三本件事故の発生と剛の死亡

1  剛が昭和五二年七月二五日午前一一時ころ、それまでいた病床が六床ある本件病棟の三一九号室から個室である本件病室に移されたこと、その後、本件事故が発生し、剛が脳酸素欠乏症に陥り、高度中枢神経障害を起こしていわゆる植物人間の状態となり、昭和五七年六月一二日死亡したことは、当事者間に争いがない。

2  右当事者間に争いのない事実と〈証拠〉を総合すれば、次の各事実を認めることができ〈る。証拠判断略〉

(一)  昭和五二年七月二五日、同日から剛に付き添うことになった原告キミは、午前一〇時ころ剛がいる本件病棟の三一九号室を訪れた後、本件病棟指導室において、本件病棟の婦長である北村カヨ(以下「北村婦長」という。)から、付添者の食事やベッドの借出手続など剛に付き添うに当たっての指導を受けた。

(二)  剛は、それまで病床が六床ある本件病棟の三一九号室に収容されていたが、原告キミが付き添うことになったため、個室である本件病室に移ることになり、同日午前一一時ころから正午ころまでの間に、今野看護婦や大野久美子看護婦(以下「大野看護婦」という。)らが準備をして剛を本件病室に移動させた。

なお、本件病棟は、一歳六月から一五歳までの患児を収容していた幼児・学童外科病棟で、比較的年少者で常に十分観察が必要な患児をAチームに、年長者及び付添者のいる患児をBチームに概ね分類し、A、B各チームごとにチームリーダー及びフリーと称される看護婦各一名を配属してチームナーシングを実施していた。そして、剛は、当時満一歳一一月であったが、原告キミが付き添うことになったためBチームに分類され、同日の日勤帯(午前八時三〇分から午後五時まで)は、チームリーダーである今野看護婦とフリーである大野看護婦が共同して剛の看護に当たっていた。

(三)  原告キミは、剛が本件病室に移された後、剛に付き添い、本件病室前の廊下等で剛を遊ばせていたが、同日午後一時二〇分ころ、今野看護婦が本件病室を訪れて剛の定時の検温を行った。

なお、高橋医師は、同日午後一時三〇分ころ薬品調剤のため本件病棟に行った際、本件病室前の廊下で原告キミに会い、その際、本件病室内のベッドの上で剛がベッドの柵につかまって立っているのを認めた。

(四)  その後、同日午後一時四〇分ころ、今野看護婦が剛にミキサー食を与えるために再び本件病室を訪れたが、剛が動き回るので、剛をベッドの上に仰向けに寝かせ、剛の身体をそのままの状態に押さえ付けるチョッキ様の仰制帯を装着し、輸液ポンプを使用してミキサー食二〇〇㏄を剛の胃瘻部から注入し始めた。

原告キミは、今野看護婦と世間話などしていたが、剛がミキサー食注入開始後一〇分くらいしてうとうとし始めたところ、今野看護婦から剛が眠っている間に食事をしてきたらどうかと言われたため、これに応じることにしてその旨を同看護婦に告げ、同看護婦が本件病室を退出してから五分くらいした同日午後二時ころ本件病室を出た。そして、原告キミは、地下一階の食堂で食事をした後、付添用のベッドを借りる手続をして、同日午後二時四〇分ころ本件病室に戻ったところ、剛は顔面そう白の状態で、胃瘻部から注入を受けていたミキサー食を嘔吐し、口と首の周りにミキサー食が飛び散り、気管カニューレが気管切開部から抜去していることを発見し、直ちに本件病棟記録室(ナースステーション)に看護婦を呼びに行った。

(五)  本件病棟記録室にいた今野看護婦は、原告キミに呼ばれたため、大野看護婦にも声を掛けて、二人で本件病室に入ったところ、剛は、顔面そう白の状態で、仰向けに身体をまっすぐに伸ばした姿勢でベッド上に横たわっていた。今野看護婦が直ちに剛の脈をとってみたが、脈はなく、既に心停止、呼吸停止の状態であった。そして、剛の気管切開部に挿入されていた気管カニューレは、その上部に通されて剛の首の周囲に結び目を作って縛られていたひもが完全にほどけた状態で剛の頭の左側のベッド上にあったので、今野看護婦は、すぐこれを剛の気管切開部に挿入しようとしたが、気管切開部のところが吐物でいっぱいになっていたので、まず吐物の吸引を始めた。そこへ大野看護婦からの知らせで北村婦長や高橋医師が駆け付けてきて、高橋医師らが、抜去した気管カニューレを剛の気管切開部に挿入した上、人工呼吸器のアンビュウバッグで酸素を送り、心臓マッサージを施行し、ボスミン一アンプルを心室内に注入するなどの蘇生術を施行した結果、剛は、同日午後二時四五分ころ心臓の拍動を再開し、同日午後三時ころには自発呼吸も再開したが、その後の諸処置にもかかわらず意識は回復せず、結局、脳酸素欠乏症による高度中枢神経障害を残していわゆる植物人間の状態となり、約五年間闘病生活を続けた後、昭和五七年六月一二日、本件事故を契機とする長期にわたる持続的な低酸素状態による遷延性(慢性的)窒息により死亡した。

3  なお、被告は、剛は本件食道再建手術後呼吸障害に対する呼吸管理上の必要から最終的に気管切開を受けたのであり、気管切開前から健常な呼吸状態ではなく、気管切開後本件事故までの間にも気管の肉芽や分泌物等によって吸呼が悪化したことが度々あったことから、本件事故と遷延性の窒息による剛の死亡との間に因果関係があるということはできないと主張するが、前示のとおり、剛は、気管内分泌物が十分に吸引できなかったことなどによる肺合併症も気管カニューレを挿入するようになってから次第に改善され、本件事故発生当時は今後肉芽の形成による気道狭窄に対する治療が相当期間必要とされてはいたものの、身体的には全体として良好な状態に向かっていて、将来の退院、自宅療養を見込めるほどになっていたのであって、本件事故が発生しなくても剛が遷延性の窒息により死亡する余地があったとは考えられず、被告の右主張は採用することができない。

四気管カニューレ抜去原因と被告の責任

1 本件事故発見当時、気管カニューレの上部に通されて剛の首の周囲に結び目を作って縛られていたひもが完全にほどけ、右のひもがその上部に付いたままの状態で気管カニューレが剛の頭の左側のベッド上にあったことは前示のとおりであるところ、本件全証拠を検討しても、気管カニューレのひもがどのようにしてほどけ、気管カニューレがどのようにして抜去したのかを具体的に明らかにすることはできない。しかしながら、本件全証拠を検討しても、何人かが故意に気管カニューレを固定しているひもをほどくなどして気管カニューレを抜去したことをうかがうことはできないことにかんがみれば、他に反証のない限り、何らかの偶発的原因により気管カニューレを固定していたひもの結び目が自然にほどけて気管カニューレが抜去したものと推認するのが相当であり、本件全証拠を検討しても右推認を覆すに足りる証拠はない。

2  しかして、剛は本件事故当時気管カニューレによって呼吸を行っていたのであるから、気管カニューレを剛に装着する本件病院の医師には、気管カニューレのひもが自然にほどけて抜去することのないようしっかりと気管カニューレを装着すべき注意義務があることはいうまでもないところ、何らかの偶発的原因により気管カニューレを固定していたひもの結び目が自然にほどけて気管カニューレが抜去した場合には、他に反証のない限り、気管カニューレの装着に不適切なところがあったものと推認するのが相当であり、本件全証拠を検討しても右推認を覆すに足りる証拠はない(高橋医師は、前記二6認定のとおりの気管カニューレの固定方法をとっていたのであるが、右固定方法自体に問題はないとしても、それを適切に実施するかどうかが問題なのであるから、高橋医師が当時気管カニューレの固定方法として右の方法をとっていたということだけでは、前記推認を覆すには足りず、また、今野看護婦は、証人として、昭和五二年七月二五日午後一時二〇分ころ定時の検温のために本件病室に行った時に剛の気管カニューレの状態を確認したが異常はなかった旨証言するが、右証言も、いまだ前記推認を覆すには足りない。)。

3 そうすると、本件事故発生前最後に剛に対して気管カニューレを装着した高橋医師には気管カニューレ装着上の過失があったものというべきであるから、同医師の使用者である被告は、民法七一五条一項により、本件事故によって剛及び原告らに生じた後記損害を賠償すべき責任がある。

五時効の抗弁について

そこで、被告の抗弁について判断するに、剛の法定代理人でもある原告らが本件事故の発生を知ったのが昭和五二年七月二五日であることは、当事者間に争いがなく、本訴が提起されたのが同日から三年を経過した後である昭和五六年一一月六日であることは記録上明らかである。

しかしながら、民法七二四条にいう「損害……ヲ知リタル」とは、単に損害発生の事実を知ったというだけでは足らず、その加害行為が不法行為になることを知らなければ同条による三年の時効期間は進行しないものと解すべきところ、前示のとおり、本件事故の原因は本件全証拠によっても具体的に明らかにすることができないことにかんがみると、剛の法定代理人でもある原告らが本件事故が被告の不法行為になることを知ったのは、原告ら訴訟代理人に本件訴訟の提起・遂行を委任した直前ころと推認するのが相当であり、その後三年を経過せずして本件訴訟が提起されたことは、弁論の全趣旨により認めることができる。

よって、本件では、民法七二四条による三年の消滅時効は完成しておらず、被告の抗弁は採用することができない。

六損害

1  逸失利益

一一七一万六二九三円

前示のとおり、剛(本件事故当時満一歳一一月)は、先天性食道閉鎖症を患っていたが、その根治手術である本件食道再建手術を受け、手術後みられた移植腸管の穿孔もその後治癒して、胃瘻部からの継管注入による栄養補給から経口摂取に徐々に移行するようになり、また、気管内分泌物が十分に吸引できなかったことなどによる肺合併症も気管カニューレを挿入するようになってから次第に改善され、本件事故発生の日である昭和五二年七月二五日当時は、今後肉芽の形成による気道狭窄に対する治療が相当期間必要とされてはいたものの、身体的には全体として良好な状態に向かっていた。また、〈証拠〉によれば、前記気道狭窄についても、当時の医療水準に照らして少なくとも一八歳の時までには治癒している可能性が高かったことが認められる。

そうだとすると、剛は、本件事故により植物人間となった上死亡することがなければ、一八歳から六七歳まで四九年間稼働し、その間毎年昭和五二年賃金センサス第一巻第一表の産業計・企業規模計・学歴計の男子労働者の平均年間給与額二八一万五三〇〇円の収入を得ることができたと認めるのが相当である。そして、これから、その間の生活費として年収の五割相当額を控除し、さらに、ライプニッツ式計算法により年五分の割合による中間利息を控除すると、剛が本件事故により植物人間となった上死亡したことによる逸失利益の本件事故当時の現価は、次の計算式のとおり、一一七一万六二九三円(一円未満切捨て)となり、これと異なる原告らの主張は採用することができない。

|2,815,300×(1−0.5)|×(19.1610(65年のライプニッツ係数))−10.8377(16年のライプニッツ係数))≒11,716,293(円)

2  雑費 八万四九三〇円

〈証拠〉によれば、剛は植物人間の状態となったため、排便、排尿等におむつを使用することが必要となり、原告壽は、そのための紙おむつ代として、少なくとも、昭和五六年九月九日から昭和五七年六月一二日までの間原告の請求金額である八万四九三〇円を支出したことが認められる。

3  葬儀費用 二〇万円

〈証拠〉によれば、原告壽は、剛の葬式のために一五万五〇〇〇円を支出したことが認められ、さらに、原告壽が剛の法要等の費用を支出したことは、弁論の全趣旨により推認できるから、本件事故による剛の死亡を理由として原告壽に賠償されるべき葬儀費用は合計二〇万円が相当であると認められる。

4  慰謝料

前示のとおり、剛は、先天性食道閉鎖症を患っていたが、その根治手術である本件食道再建手術を受け、手術後みられた移植腸管の穿孔もその後治癒して、胃瘻部からの注入による栄養補給から経口摂取に徐々に移行するようになり、また、気管内分泌物が十分に吸引できなかったことなどによる肺合併症も気管カニューレを挿入するようになってから次第に改善され、本件事故発生当時は、今後肉芽の形成による気道狭窄に対する治療が相当期間必要とされてはいたものの、身体的には全体として良好な状態に向かっていたところ、本件病院の医師の過失による本件事故によって植物人間となり、約五年間の闘病生活の後死亡するに至ったのであるが、これにより剛本人及び剛の父母である原告両名に支払われるべき慰謝料額は、剛本人について八〇〇万円、原告両名について各自二〇〇万円が相当であると認められる。

5  弁護士費用

剛の法定代理人でもある原告らが原告ら訴訟代理人に本件訴訟の提起・遂行を委任し、手数料及び報酬を支払うことを約束したことは、弁論の全趣旨により認められるが、本件訴訟の内容、難易、審理の経過、認容額、その他本件に現れた一切の事情を考慮すると、本件事故と相当因果関係のある損害として賠償されるべき弁護士費用は、剛につき一九七万円、原告壽につき二三万円、原告キミにつき二〇万円と認めるのが相当である。

七請求原因7(相続)の事実は、当事者間に争いがない。

八結論

以上によれば、原告らの本訴請求は、被告に対し、不法行為による損害賠償請求権に基づき、原告壽において、その固有の前記損害合計二五一万四九三〇円と相続により取得した剛の前記損害合計二一六八万六二九三円の損害賠償請求権の二分の一の一〇八四万三一四六円(一円未満切捨て)との合計一三三五万八〇七六円並びにその内金である剛及び原告壽が被った弁護士費用相当額の損害を除いた損害合計一二一四万三〇七六円に対する本件事故の日の後である昭和五二年七月二六日から、及び右弁護士費用相当額の損害合計一二一万五〇〇〇円に対する本件口頭弁論終結の日の翌日であることが記録上明らかな昭和六三年九月八日から各支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の、原告キミにおいて、その固有の前記損害合計二二〇万円と相続により取得した剛の前記損害合計二一六八万六二九三円の損害賠償請求権の二分の一の一〇八四万三一四六円(一円未満切捨て)との合計一三〇四万三一四六円並びにその内金である剛及び原告キミが被った弁護士費用相当額の損害を除いた損害合計一一八五万八一四六円に対する前記昭和五二年七月二六日から、及び右弁護士費用相当額の損害合計一一八万五〇〇〇円に対する前記昭和六三年九月八日から各支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九二条本文、九三条一項本文を適用し、仮執行宣言の申立てについては、原告らの各認容額のうちいずれも五〇〇万円の限度において相当と認めて同法一九六条一項を適用し、仮執行免脱宣言の申立てについては相当でないからこれを却下して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官石井健吾 裁判官木下秀樹 裁判官増田 稔)

別紙逸失利益計算表〈省略〉

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